なぜ今、SNSは陰謀論であふれているのか——あなたの身近にも迫る「分断」の正体
「財務省解体デモ」「反ワクチン運動」「排外主義的な主張」——ここ数年、日本のSNSやデモの現場で、かつてないほどの陰謀論と排外主義が渦巻いています。
あなたの周囲にも、いつの間にか根拠のない情報を信じ込み、過激な主張を繰り返す人はいませんか? 家族や友人との会話がかみ合わなくなり、社会が見えない壁で分断されていく——そんな違和感を抱えている方は少なくないはずです。
今回ご紹介する『陰謀論と排外主義 分断社会を読み解く7つの視点』(扶桑社新書)は、こうした現代日本の「分断」の構造を、7人の専門家が多角的に解き明かした一冊です。2025年11月28日に発売されるやいなや、ネット書店ランキング1位を獲得し、大都市圏の書店では品薄状態が続くなど、大きな反響を呼んでいます。
本書の概要——現場を追い続けた7人の執筆陣が明かす「分断社会」の真実
本書は、陰謀論デモや排外主義運動の現場で取材を続けてきた7人の専門家による共著です。著者陣には、フリーライターの藤倉善郎氏、ウェブライターの黒猫ドラネコ氏、選挙ウォッチャーちだい氏、評論家の古谷経衡氏など、それぞれ異なる専門性を持つ論者が名を連ねています。
彼らは2020年の米大統領選前後から加速した反ワクチン運動や、レイシズム、歴史修正主義と結びついた政治運動を、単なる一過性のブームとしてではなく、日本社会の構造的な問題として捉えています。本書は、SNSの投稿を眺めるだけでは決して見えてこない、デモの現場のリアルな声と、その背後にある複雑な人間関係、思想の変遷を丹念に追ったルポルタージュとなっています。
定価は1,100円(税込)。新書という手に取りやすい形式でありながら、その内容は非常に密度が濃く、現代社会を理解するための重要な視点を提供してくれます。
本書から学ぶ5つの重要ポイント
1. 陰謀論デモの実態——現場で何が起きているのか
参政党や反ワクチン運動のデモには、どんな人々が集まり、何を訴えているのか。黒猫ドラネコ氏の章では、デモ参加者の具体的な様子が活写されており、「なんとなくヤバい」という印象論ではなく、具体的な問題点が理解できます。
2. なぜ人は陰謀論にハマるのか——社会心理学からの考察
山崎リュウキチ氏は、陰謀論が「塗り絵」のように機能していると指摘します。つまり、人々は陰謀論という枠組みに自分の不満や不安を投影し、自分なりの「真実」を構築していくのです。この視点は、陰謀論を単なる「非科学的な妄想」として切り捨てるのではなく、社会の閉塞感や不安がどう反映されているのかを理解する手がかりを与えてくれます。
3. 陰謀論と排外主義の結合——なぜ反ワクチン派が日の丸を振るのか
当初は反ワクチンや反科学を掲げていた運動が、いつの間にか排外主義や差別的な主張と結びついていく過程を、藤倉善郎氏が詳細に追っています。トランプ支持のQアノンから日本の参政党まで、陰謀論がどのように政治運動化していくのか、その構造が明らかになります。
4. 政治家とデマの関係——陰謀論を利用する者たち
選挙ウォッチャーちだい氏の章では、陰謀論やデマを政治利用する議員たちの人的ネットワークが浮き彫りにされます。N国党を中心としたつながりや、選挙における彼らの戦略など、政治の裏側が見えてきます。
5. 日の丸というシンボルの意味——愛国と陰謀論の接点
菅野完氏は哲学的な視点から、なぜ陰謀論者たちが日の丸を掲げるのかを考察します。統一的なシンボルを持たない彼らが、日の丸を「使えるシンボル」として採用していく過程は、戦後の保守思想の変遷とも重なります。
この本を読むことで得られる変化
本書を読むことで、あなたは次のような変化を実感できるでしょう。
情報リテラシーが向上する: SNSで流れてくる情報の背景や意図を見抜く力が身につきます。単に「デマだ」と切り捨てるのではなく、なぜそのデマが生まれ、広がるのかを理解できるようになります。
対話の糸口が見つかる: 家族や友人が陰謀論に傾倒している場合、頭ごなしに否定するのではなく、その背景にある不安や不満を理解し、適切なコミュニケーションを取るヒントが得られます。
社会を冷静に見る視点を獲得する: 感情的な対立に巻き込まれることなく、分断の構造を俯瞰的に捉えられるようになります。これは、ビジネスパーソンとして組織内の対立を分析する際にも応用できる視点です。
デマに対抗する武器を手に入れる: 「差別はダサい」という根本的な価値観に立ち返り、建設的な発信ができるようになります。

この本が向いている人・向いていない人
こんな人におすすめ
- SNSで流れる情報の真偽が判断できず、不安を感じている人
- 家族や知人が陰謀論にハマってしまい、どう対応すればいいか悩んでいる人
- 現代日本の政治・社会状況を深く理解したいビジネスパーソン
- ジャーナリズムや社会問題に関心がある学生・研究者
- メディアリテラシーを高めたいすべての人
こんな人には物足りないかも
- すでに陰謀論や排外主義について詳しく研究している専門家
- 軽いエンタメ読書を求めている人(本書は真剣な社会問題を扱っています)
- 具体的な解決策やマニュアルを求める人(本書は分析・考察が中心です)
他の人気ビジネス書・社会問題書との比較
『ファクトフルネス』(ハンス・ロスリング)との違い
『ファクトフルネス』が世界規模のデータで人間の思い込みを解き明かすのに対し、本書は日本社会の「今」にフォーカスし、現場のルポルタージュを通じて分断の実態を描いています。データよりも人間のリアルな声を重視したい方には本書がおすすめです。
『日本を蝕む極論の正体』(古谷経衡)との関係
本書の共著者でもある古谷経衡氏の過去作と合わせて読むことで、日本の極論・ポピュリズムの系譜がより深く理解できます。本書はより現場に密着した視点が特徴です。
『「カルト宗教」取材したらこうだった』(藤倉善郎)との連続性
同じく本書の共著者である藤倉善郎氏の著作と併せて読むことで、カルト問題から陰謀論への連続性が見えてきます。宗教的な思考と陰謀論の親和性に興味がある方は両方読むことをおすすめします。
まとめ——今日からできる「分断」への対抗
陰謀論や排外主義は、決して「一部のおかしな人たちの問題」ではありません。SNSが生活の一部となった現代において、誰もがその影響を受ける可能性があります。だからこそ、私たち一人ひとりが、情報の背景を読み解く力を身につけることが重要なのです。
本書『陰謀論と排外主義 分断社会を読み解く7つの視点』は、その第一歩として最適な一冊です。7人の専門家による多角的な視点は、あなたに新たな「見る目」を与えてくれるでしょう。
今日からできる行動:
- SNSで気になる情報を見かけたら、その情報源を確認する習慣をつける
- 家族や友人との対話で、相手の不安や不満に耳を傾ける
- 「差別はダサい」という価値観を、日常の小さな場面で実践する
分断された社会を修復する特効薬はありません。しかし、一人ひとりが正しい知識を持ち、冷静に考え、対話を続けることで、少しずつ状況は変わっていくはずです。
この本は、その長い道のりの確かな道標となってくれるでしょう。
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『陰謀論と排外主義 分断社会を読み解く7つの視点』(扶桑社新書)
著者: 黒猫ドラネコ、山崎リュウキチ、藤倉善郎、選挙ウォッチャーちだい、清義明、古谷経衡、菅野完
定価: 1,100円(税込)
※本記事はAmazonアソシエイトプログラムを利用しています


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